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Golfの作業ログ

Vincent Moonという天才について

3月4月はDisplayのリリース&リリパがあり、とても印象深い季節だったのですが、実はさらにもうひとつ、ぼくにとって非常に大切な出来事がありました。



SLEEPERS FILMとVincent Moon!

この真ん中にいるやけに陽気な(笑)フランス人は、Take Away Show(以下TAS)の創始者であり、映像作家/カメラマンのVincent Moonです。

右にいる男がいつになくうれしそうなのも当然です。ぼくがSLEEPERS FILMを始めたのは、この人の映像があったから。

Dirty Projectorsのこの映像をみたことが全ての始まり。



いま見ても素晴らしい!
美女コーラス軍団を従えた左利きのクレイジーな男が、マクドナルドに入っていくこのライブビデオをみて、本当に意味がわからなくて、非常に興奮したのを覚えています。

とにかくこのバンドはすごい。面白い。

で、この映像を作ってる人はいったいだれなの。

と思ったので、最後に出てくるURLをメモって、La Blogothequeというウェブサイトに辿り着きました。

TAKE AWAY SHOWはどうやら、La Blogothequeというフランスのブログのコンテンツらしいということ、Vincent MoonというカメラマンとChrydeというプロデューサーが始めたプロジェクトだということを知り、そして、大量にアーカイブされていた魅力的すぎるミュージックビデオを見つけました。





元々、音楽のビデオというのは、
・色々なギミックや編集を駆使した手の込んだプロモーションビデオ(PV)
・ライブの様子を何台かのカメラで撮影してきれいにカット割りされているライブビデオ
・ホームビデオのようなもので撮影したローファイなビデオ

この3パターンしかなかったわけです。ところがTASが作っているものはそのどれとも違う、斬新な映像でした。

・ミュージシャンがその場でマイクやアンプなしで歌い、演奏している しかも音がいい
・ライブがこれまで見たことがないような場所で突然始まっている
・映像に対する独特な美意識があって、どのビデオも作品として昇華されている
・これらをスタイルとして確立し、アーカイブしている
・何よりとにかく楽しそう

まあ、簡単に整理するとザッとこのようなことを感じ、その試みの新しさにとにかく衝撃をうけました。そして、それを撮影しているVincent Moonという男のことが気になって色々と調べたりもしました。

今となっては一眼レフや、ましてやiPhoneでも簡単にきれいな動画が高音質で撮影でき、Youtubeへすぐにアップ出来てしまうわけで、珍しいことでもないかもしれませんが、当時はまさにそういったインフラが整い始めたばかりの時代でしたから、このTASチームのDIYによるクリエイティブは本当に衝撃だったんです。

そして、「かっこよくて素晴らしい音楽は、真似したくなる。」の名言の通り(誰が言ったんだかわからんけど)、ぼくはTASスタイルの映像を作ってみたくてしょうがなくなってしまったので、友人のVX-2000というSonyのカメラを借り、golfのジャケットやWebサイト全般のデザインを手がけていた布川をけしかけて試すことにしました。




これがスリーパーズフィルム一本目の作品。

Vincent Moonの映像には全く及ばなかったものの、何か新しい試みをやれている感触は確実にあって、何よりとても楽しかったので、その後もgolfのビデオを何本か作っているうちに、ミュージシャン仲間にも撮ってほしいと言われ、なんだかんだ続けて、もう5年以上経って今に至ります。

はじめて2年目の時に、TASチームのボス、Chrydeから連絡があり、東京で一緒に撮影イベントをやったこともありました。その様子はこちらに。

そのイベントを経て、TASへの憧れがいい意味で吹っ切れたぼくらは、モノマネをするのをやめ、日本に暮らしている我々独自のものを作っていけばいいやと考えるようになったのですが、同じような時期に、Vincent Moonの創作活動も少しずつLa Blogotheque本体から離れて、よりローカルなドキュメンタリーミュージックフィルムの趣向を強くしていくなど、さらに新たな局面を見せてくれました。

あまり大きく語られることはないですが、音楽にまつわる映像表現の中で、もしくは現代の音楽そのものに対して、TASがもたらした功績というのは非常に大きかったと思います。今じゃわざわざそんなことを取り立てて言う人もいないということ自体が、それを証明しているかもしれません。

そんなわけで、ぼくにとって最も重要な映像カメラマンはVincent Moonなわけです。

と、すごく長くなってしまったのですが、そんな彼から突然、来日するから会おうぜとメールがきて、ohまじかよ!いくよ!となって、上の写真へと至るわけです。ああ、ここにくるまで長かった。

まとめると、一緒にのめてうれしかった。って話です…。

今回の来日は、新しく始めるプロジェクトのためだったそうで、これから面白いことが日本でも起こるようです。アップルストアでのトークイベントも非常に盛り上がってました。

気になる方は、ぜひVincent Moonのウェブサイトをチェック!そして、今後ともSLEEPERS FILMをよろしくどうぞ!